家族を自死でなくした苦しさを見つめる心理学

 

 

 

令和3年中に自死で亡くなる方は21,007人(厚労省・警察庁, 2022)でした。

 

 

 

ご本人の苦しみは想像もつかないものでしょう。

 

 

 

本当につらいと思います。

 

 

 

そして、亡くなられた方には、友達や家族がいることでしょう。

 

 

 

自死によって遺されたご家族や友人の方々にとっても、言葉に言い表せないほど悲しく苦しいものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

日にち薬という言葉がありますが、遺されたご家族や友人の方々にとっては、時間の経過による癒やしは感じにくいものです。

 

 

 

例えば、ついこの前のことのように思い出してしまいます。

 

 

 

ニュースを見たり、何かの出来事に関連して思い出してしまうこともあるでしょう。

 

 

 

「その時」からずっと、悲しさ、苦しさ、そして言葉にできない想いを抱えてこられたのではないでしょうか。

 

 

 

ずっと後悔や自責の念を抱えて来られたことでしょう。

 

 

 

嬉しいことや楽しいことを経験することに後ろめたさを感じてしまうこともあるでしょう。

 

 

 

打ち明けたり、相談したりすることで、自分だけ忘れてラクになってもいいのかと悩むこともあるかもしれません。

 

 

 

そもそも、どう話していいかわからず、なかなか他人に言えず、孤立してしまうことも多いのではないでしょうか。

 

 

 

このように、ご遺族や友人の方々の悲しみも、計り知れないほど苦しいものです。

 

 

 

 

 

 

 

 

人間は、因果関係で物事を考えます。

 

 

 

なぜ。

 

 

 

どうして。

 

 

 

わからないことを理解したいと思う。

 

 

 

それは自然なことです。

 

 

 

時間が経ってからわかることもあります。

 

 

 

でも、答えようのない、また答えのない問いもあります。

 

 

 

様々な要因が連鎖する中で起こっている(厚労省・警察庁, 2022)のです。

 

 

 

生物―心理―社会モデル(下山, 2015)でとらえていく必要があります。

 

 

 

生物―心理―社会モデルとは、生物的側面(主に医療)、心理的側面、社会的側面(経済や生活など)の各側面から検討していくものです。

 

 

 

(アン・ジョン著、高橋訳, 2016)では、原因探しをやめた時から回復のプロセスが始まると言っています。

 

 

 

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納得のいく理由はおそらく永遠に見つからないだろうと自分自身に認める時が、

 

あなたにもいつかやってくるでしょう。

 

(中略)

 

理由探しを打ち切り、因果律を当てはめて犯人を見つけようとするのをやめれば、

 

罪悪感に満ちた自己非難とも決別できます。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 (アン・ジョン著、高橋訳, 2016)

 

 

 

原因を見つけたからと言って、悲しみを元に戻すことはできない。

 

 

 

それはわかっている。

 

 

いえ、わかっているからこそ、原因を見つけようとしたり、自分を責めて後悔したりしてしまうのかもしれません。

 

 

 

強いショックの時は、このような循環思考になりがちです。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな循環思考になってしまったとき、考えてしまってつらいとき、どうしたらいいのでしょうか。

 

 

 

そんなときは、感謝を心の中で伝えてください。

 

 

 

ごめんねではなく、ありがとうと伝えてください。

 

 

 

そんな単純なことで?と思うかもしれませんが、そうすることで、失ってしまった時間としてではなく、共有できた時間として意識を向けることができます。

 

 

 

その時間は短かったかもしれないし、こうすればよかったと後悔しているかもしれないけれど、感謝することで、共有できた時間を認め、受け入れることができます。

 

 

 

それは、かけがえのない時間だったのです。

 

 

 

だから、思い出してつらいときは、まずは感謝の気持ちを伝えてみてください。

 

 

 

悲しいことだけでなく、うれしい思い出、楽しい思い出もありました。

 

 

 

全部丸ごと大切な思い出です。

 

 

 

 

 

 

 ●最後に

・罪悪感を抱えているとしたら、それはあなただけではありません。

・私たちは誰もがパーフェクトではありません。

・パーフェクトでなかったからと言って自分を責めないでください。

アン・ジョン著、高橋訳 (2016)では、サポートグループに参加してみることを勧めています。

 

 

 

 

 

参考文献

・アン・スモーリン、ジョン・ガイナン著、高橋祥友訳 自殺で遺された人たちのサポートガイド ―苦しみを分かち合う癒やしの方法― 明石書店 2016

・河合隼雄 河合隼雄のカウンセリング講座 創元社 2013

・厚生労働省自殺対策推進室・警察庁生活安全局生活安全企画課 令和3年中における自殺の状況 令和4年(2022年11月18日参照)

・下山晴彦編 よくわかる臨床心理学[改訂新版]ミネルヴァ書房 2015