感染の罪悪感を手放す心理学

 

 

 

●    私の経験

 

 

 

20代のとき、

結核にかかったことがあります。

 

 

 

かなり咳が出て、

夕方から高熱が出る症状でした。

 

 

 

 

 

クリニックでお医者さんに「結核」と診断されると、

郊外の小高い丘の上にある、

専門の病院に入院することになりました。

 

 

 

 

 

●    状況から受ける心理的影響

 

 

 

隔離入院でした。

 

 

 

入院した時点では、

いつ退院できるかわかリません。

 

 

 

退院の日が、1ヶ月延び、また1ヶ月延びて、

結局4ヶ月間入院しました。

 

 

 

治療は、

基本的には薬を飲むだけです。

 

 

 

ですが、

何種類も薬を飲まなくてはなりません。

 

 

 

また、

ちゃんと服薬したかどうかを

看護師さんのチェックを受けます。

 

 

 

また、自分に面会に来る人は、

マスクをつけなければなりません。

 

 

 

 

 

●    退院後の人の目が与える心理的影響

 

 

 

自分の中では、

科学的、理論的に考えてみて、

医療従事者が感染しないため、

身近な人、社会に広めないために、

隔離などの対応が必要なことは

 

わかっているのです。

 

 

 

また、退院した後も、

自分が結核にかかっていたとは、

簡単には他人に言いにくいものです。

 

 

 

完治しないと退院できないにもかかわらず、

「〇〇年に完治しました」と言って、

相手を安心させないといけないと思っていました。

 

 

 

 

田舎の祖父母の家では、

「結核で隔離入院して大変だったよ」という

苦労話もできません。

 

 

 

感染しないと頭ではわかっていても、

怖がるでしょうから。。。

 

 

 

また、感染したことについて、

健康管理ができてないとか、

恥だと思われるのではないか、などなど、

いろいろ考えてしまって、

こちらも気にしてしまうのです。

 

 

 

感覚的に、

人から避けられたり、

危険視される思いを

自分自身に取り込むようになったの

だと思います。

 

 

 

このように、

自分がわるいのではないかと

思ってしまうのです。

 

 

 

 

 

私は結核の入院や治療に際して、

結核にかかったことを

後ろめたいと思うようになりました。

 

 

 

「誰かにうつしたかもしれない」

 

 

 

「うつしてしまうかもしれない」

 

 

 

「自己管理ができていないと思われるかもしれない」

 

 

 

「自分のせいと言われるかもしれない」

 

 

このように、

私は、自分がわるいのではないかという思いが

次第に自分の内面に影響していったように

感じました。

 

 

 

 

●    取り込んでしまった思い込みを癒す

 

 

 

 

結核は、身体がストレスで弱っていたりすると、

気をつけていても、感染してしまうことも

あるようです。

 

 

 

誰でもかかり得る病気であると言えるでしょう。

 

 

 

隔離、服薬チェック、マスクなどの保護は、

治療のために必要なものです。

 

 

 

自分を罪悪視したり、危険視したりする

必要はないのです。

 

 

 

誰でもかかる可能性があるのですから、

自分も他人も責めないようにしたいものです。

 

 

 

菌やウィルスを憎んで、人を憎まず。 

 

 

 

病気に関する正確な情報を知って、

過度に心配しないように、

自分を責めないように、

したいものです。

 

 

 

 

さいごに、

医師の先生を始めとして、

保健師さん、看護師さんなど、結核の医療チームの

方々には感謝しています。

 

 

結核の隔離病棟で働く方々には、

本当に頭が下がる思いです。

 

 

この文章にあります感染症への治療は、

必要不可欠なことです。

 

 

このコラムの内容は、

当時の一患者である、私の考えであることを

お断りしておきます。

 

 

 

また、病気や医療に関しては、

医療機関などで正しい情報を得るように

してください。

 

 

 

 

 

参考文献:

『ステレオタイプの社会心理学 偏見の解消に向けて』(上瀬由美子著、サイエンス社、2016年)。

 

参考URL:

公益財団法人結核予防会 https://www.jatahq.org/ 2022年2月4日付。