原因よりも未来

 

 

 

 マザー・テレサの施設で

 

ボランティアをしているとき、

 

ちょっとした手術に

 

立ち会ったことがありました。

 

 

 

もちろん私は医者ではないので、

 

懐中電灯を持って患部を照らすと

 

いう些細な役割でしたが。

 

 

 

患者は呻きながら、

 

ボランティアの医師が針と糸で

 

傷口の両端の皮ふを縫っていました。

 

 

 

来たばかりのボランティアの人や、

 

見学している人から、

 

よく原因を尋ねられたものです。

 

 

 

当時、少しばかり続けている自分としては、

 

原因も大切だが目の前の状況を

 

どうするかの方が重要になりました。

 

 

 

だから些細な役割でも引き受けたのだと

 

思います。

 

 

 

心の問題を考えてみると、

 

家族心理学の分野では、

 

原因があって結果があるというのを

 

直線的因果律といいます。

 

 

 

一方で、

 

原因があって結果があるだけでなく、

 

複数の原因があり複数の結果がある状況や

 

原因が結果であると同時に

 

別の原因になっている場合もあります。

 

 

 

これを円環的因果律といいます。

 

 

 

育児の問題、不登校の問題は、

 

直線的因果律で捉えることは難しいですよね。

 

 

 

学校での様子、友人関係、両親、

 

家庭、祖父母、地域などに

 

拡げて考える必要があります。

 

 

 

協力者を求めたり、

 

パターン化された傾向を見つけることで

 

当事者の負担を減らしたり、

 

別のアイディアを得ることができるでしょう。

 

 

しかしながら、問題のさなかでは、

 

 

家族のあるべき姿を

 

「家庭の問題は当事者で解決しなければいけない」 

 

と思っています。

 

 

 

あるいは、成長のゴールを

 

「ひとりでできる」

 

「ひとりでできることを増やす」

 

 と思っていたりします。

 

 

 

すると、

 

できない本人に原因がある、

 

できることが少ない家庭に問題があると

 

なりがちですよね。

 

 

 

しかしそんなことはもちろんありません。

 

 

 

たまたま、ある人にサインが現れた、

 

たまたま、ある家族に課題が出てきたと

 

いうことなのです。

 

 

 

他の家族に出てきてもおかしくないし、

 

一世代前の家系に現れてもおかしくなかったのです。

 

 

 

自分が課題だと思っている枠を

 

少し拡げてみると、

 

どんな景色が見えるでしょうか。

 

 

 

そして、

 

課題を持っている人の未来というのは、

 

協力する関係の中にあるということ。

 

 

 

最初のつながりは、

 

ちょっとしたことかもしれません。

 

 

 

それがどんな関係に育っていくのか、

 

不思議さもありますよね。

 

 

 

 

 

■ 参考文献

『家族の心理 家族への理解を深めるために』

平木典子・中釜洋子 共著 サイエンス社